紙の本と電子書籍の使い分け|全部電子にして分かった向き・不向き

電子書籍・まんが

本棚3つ分あった本を、2年かけて少しずつ電子書籍に切り替えてきました。きっかけは引っ越しです。段ボール20箱近くになった本を前に「もう紙の本は買わない」と決めて、それ以降の新刊はほぼすべて電子で買うようにしました。

結果から言うと、「全部を電子にする」のはやめました。電子にして本当によかった本がある一方で、「これは紙で持っておけばよかった」と買い直した本も何冊かあります。

この記事では、紙から電子へ切り替えてきた中で見えてきた「電子向きの本」「紙向きの本」の違いと、迷ったときに使っている判断基準をまとめます。これから電子書籍を増やしていこうと考えている方が、同じ遠回りをしないための参考になればうれしいです。

本棚3つ分を電子に切り替えて起きたこと

切り替えを始めた当初は、とにかく「部屋が広くなる」ことに感動しました。新しく買う本が一切増えないので、床に積み上がっていた未読本の山が少しずつ減り、本棚の1つを手放すことができました。通勤中にスマホで続きが読めるのも快適で、読書量は紙の頃より明らかに増えました。

ところが、半年ほど経ったころから小さな違和感が出てきます。たとえば、料理本を電子で買ったときのこと。キッチンでスマホを見ながら作ろうとしたら、濡れた手で画面をさわれない、少し目を離すと画面が消える、次のページを見たいのに手がふさがっている……と、紙なら何も考えずにできていたことが、ことごとく面倒になりました。

もうひとつは、「どこに何が書いてあったか」を思い出せない問題です。紙の本だと「右ページの下のほう、赤い図のあたり」のように、ページの位置や見た目で内容を覚えていることがあります。電子書籍は文字サイズや端末で表示が変わるので、この「場所の記憶」が働きにくいのです。検索機能はありますが、キーワードを覚えていないと探せません。

こうした経験から、「電子が便利かどうか」ではなく「その本をどう使うか」で紙と電子を選ぶべきだと考えるようになりました。以下で、具体的にどんな本が電子向き・紙向きだったのかを紹介します。

電子にして「正解だった」本

連載中の長編マンガ

いちばん恩恵が大きかったのは、30巻、40巻と続く長編マンガです。紙で集めていたころは、新刊が出るたびに本棚の空きを気にしていましたし、途中の巻を買い忘れて同じ巻を2冊買ってしまったこともありました。

電子なら置き場所はゼロで、ストアの本棚を見れば何巻まで持っているかが一目で分かります。新刊の配信通知を出してくれるストアもあり、発売日に寝る前の布団の中で読み始められるのは、紙にはない楽しさです。「読み返したくなったときに1巻からすぐ開ける」のも、長編ならではのメリットでした。

一度読めば十分な話題の本・雑誌

話題になっているビジネス書や、毎月の雑誌も電子向きでした。正直に言うと、こうした本は一度読んだらほとんど読み返しません。紙で買うと、読み終わったあと「捨てるのももったいないし、売るのも面倒」で、結局そのまま棚に残り続けていました。

電子にしてからは、読み終わった本が物理的に残らないので、この悩みが消えました。特に雑誌は1冊が重く、保管しておくと場所を取るので、電子との相性が抜群です。

通勤・移動中に読む小説

文庫本は軽いので紙でも持ち歩けますが、それでも「今日はどの本を持っていこう」と選ぶ必要があります。電子書籍なら、スマホの中に何十冊も入っているので、気分に合わせてその場で選べます。

また、電車が揺れても片手で読める、暗い車内でも画面が明るい、文字サイズを大きくできるなど、移動中の読書には電子のほうが明らかに快適でした。私は40代に入ってから小さな文字がつらくなってきたので、文字サイズを変えられる点は想像以上にありがたく感じています。

「調べ物」として開く実用書

意外だったのが、パソコンの操作解説書やプログラミングの入門書のような実用書です。これらは頭から通読するより、「あの設定どうやるんだっけ」と必要な部分だけを開くことが多い本です。電子なら全文検索ができるので、目次や索引をたどるより早く目的のページにたどり着けます。

ただし、同じ実用書でも「図やスクリーンショットが多いもの」は、スマホの小さな画面だと見づらいことがありました。こういう本はタブレットかパソコンで開くようにしています。

電子にして「失敗した」と感じた本

料理本・DIY本など「作業しながら見る」本

先ほどの料理本の話がまさにこれです。手がふさがった状態で見る本は、紙のほうが圧倒的に使いやすいです。紙の料理本は、開いたまま置いておけるし、多少汚れても気になりません。結局、よく使うレシピ本2冊は紙で買い直しました。

一方で、「献立を考えるときにパラパラ眺める」だけの料理本なら電子でも問題ありませんでした。同じジャンルでも、作業中に見るか、計画を立てるときに見るかで向き不向きが分かれます。

図鑑・写真集・画集など「大きく見たい」本

写真集や画集は、スマホの画面ではどうしても迫力が出ません。見開きで1枚の写真が載っているようなページは、スマホだと左右に分割されてしまうか、全体表示にすると小さくなりすぎてしまいます。

子どもと一緒に見る図鑑も同じで、紙の図鑑を床に広げて「これ見て!」と指さしながら読む体験は、電子ではなかなか再現できません。この手の本は、今でも紙で買うようにしています。

書き込みながら使う参考書・資格試験の問題集

資格試験の勉強で、参考書を電子で買ったときも苦労しました。電子書籍にもマーカー機能やメモ機能はありますが、紙に比べると「さっと線を引いて、余白に一言書く」という動作がどうしてもワンテンポ遅れます。

さらに問題集は、「問題ページと解答ページを行き来する」使い方が中心です。紙なら指を挟んでおけば一瞬で往復できますが、電子だとしおりを使っても何度もタップが必要でした。試験勉強のように繰り返し書き込み、ページを行き来する本は紙が向いていると感じます。

人に貸したい本・家族で共有したい本

電子書籍は基本的に、購入したアカウントに紐づいて利用する仕組みです。「この本おもしろかったから読んでみて」と友人に貸すことはできません。家族でも、アカウントを共有するかどうかはストアの規約や設定によって扱いが変わるため、気軽に回し読みするという使い方には向いていません。

わが家では、家族みんなが読みそうな小説や、子どもにも読ませたいマンガは、あえて紙で買うことがあります。「読み終わったらリビングの棚に置いておく」という共有の仕方は、紙ならではの良さです。

手放す可能性がある本

紙の本は、読み終わったら古本として売ったり、誰かに譲ったりできます。電子書籍は基本的に売却や譲渡ができないため、「読んだあと手放すかもしれない本」は、紙で買ったほうが実質的な負担が小さくなる場合もあります。

もっとも、電子書籍はクーポンやポイント還元で紙より安く買えることも多いので、「売ったらいくら戻ってくるか」と「最初にいくら安く買えるか」を比べて考えるとよいと思います。

紙か電子か迷ったときの5つの質問

ここまでの経験を踏まえて、今は本を買う前に次の5つを自分に聞くようにしています。1つでも「はい」が強ければ紙、全部「いいえ」なら電子、というのがざっくりした目安です。

  1. 作業しながら見る本ですか?(料理・DIY・手芸など、手がふさがる場面で使う)
  2. 大きな画面で見たい本ですか?(写真・図・見開きが中心)
  3. 書き込みをしますか?(勉強用・仕事用で線や余白メモを多用する)
  4. 家族や友人と共有しますか?(貸す・回し読みする予定がある)
  5. 読み終わったら手放しますか?(売る・譲る可能性がある)

逆に、「長く続くシリーズ」「一度読めば十分」「移動中に読む」「必要な部分を検索したい」という本は、電子のほうが満足度が高くなりやすいです。

もちろん、この基準がすべての人に当てはまるわけではありません。たとえば、タブレットを持っている人なら写真集や図鑑も電子で十分楽しめるかもしれませんし、書き込みはタッチペンのほうが快適だという人もいるでしょう。自分がどの端末で読むかによって、電子向きの範囲は広がったり狭まったりします。

わが家の使い分けルール(一覧表)

参考までに、現在のわが家の使い分けを表にまとめました。

本のジャンル紙 / 電子理由
長編マンガ(連載中)電子置き場所ゼロ、巻数管理がラク
家族で読むマンガ紙リビングで回し読みできる
小説(文庫・単行本)電子通勤中に読む、文字サイズを変えられる
ビジネス書・話題の本電子読み返すことが少ない
雑誌電子かさばる、保管しない
料理本(よく使うもの)紙キッチンで開いたまま使う
図鑑・写真集紙大きく見たい、子どもと一緒に見る
資格試験の参考書・問題集紙書き込む、ページを行き来する
パソコン・IT系の実用書電子全文検索で必要な箇所を探せる
大好きな作家の作品両方紙で所有しつつ、持ち歩き用に電子も

最後の「両方」は少し贅沢ですが、本当に好きな作品は、紙で本棚に並べる楽しみと、電子でいつでも読み返せる便利さの両方を味わいたくて、そうしています。全部を両方で買う必要はありませんが、「特別な数冊だけ」なら選択肢として十分ありだと思います。

これから切り替える人に伝えたいこと

手持ちの紙の本を一気に処分しない

私が一番後悔しているのは、切り替え当初の勢いで、紙の本をまとめて手放してしまったことです。あとから「あの図鑑は残しておけばよかった」「あの料理本はやっぱり紙がいい」と気づいても、同じ本を電子で買い直すか、紙で買い直すしかありません。

まずは「これから買う本だけ電子にする」ところから始めて、半年ほど使ってみてから、手持ちの本をどうするか決めるのがおすすめです。自分にとっての電子向き・紙向きが分かってから整理すれば、失敗が少なくなります。

最初は1つのストアで慣れる

電子書籍のストアはたくさんあり、それぞれクーポンや得意ジャンルが違います。ただ、最初からいくつも登録すると、「あの本はどのストアで買ったんだっけ」と本棚が散らばってしまいます。まずは1つのストアで操作に慣れて、必要に応じて2つ目を追加するくらいがちょうどいいと感じました。

「電子にすれば安くなる」とは限らない

電子書籍はクーポンや無料作品が多く、上手に使えば紙より安く読めます。一方で、ワンタップで買えてしまう手軽さから、気づけば紙の頃より出費が増えていた、ということも起こりがちです。私も最初の数か月は、深夜に続きが気になって何巻もまとめ買いしてしまい、月末の明細を見て驚いたことがあります。

月の予算を決めておく、クーポンが使える日にまとめて買うなど、自分なりのルールを作っておくと安心です。

読む端末をひとつ決めておく

電子書籍はスマホだけでも十分に読めますが、読む本のジャンルによっては、タブレットがあると快適さが大きく変わります。特にマンガの見開きページや、図の多い実用書はその差を感じやすいところです。とはいえ、最初から端末を買いそろえる必要はありません。まずは手持ちのスマホで始めて、「画面が小さくて不便だな」と感じる本が増えてきたら検討する、という順番で問題ないと思います。

紙と電子の使い分けでよく聞かれること

電子書籍だと内容が頭に入りにくい、というのは本当ですか?

私自身の感覚では、「小説やエッセイのように頭から順に読む本」は、紙でも電子でもほとんど差を感じません。一方で、図表と本文を見比べながら理解する本や、前のページに戻って確認しながら読む専門書は、紙のほうが理解しやすいと感じることがあります。これは先ほど書いた「ページの位置で内容を覚える」感覚が、紙のほうが働きやすいからだと思います。

ただし、これは個人差が大きい部分です。電子書籍のハイライト機能で大事な部分をまとめて見返すほうが、むしろ頭に残るという人もいます。気になる方は、同じジャンルの本を1冊ずつ紙と電子で読んでみて、自分に合うほうを確かめてみるのが一番確実です。

紙で持っている本を、あとから電子でも買うのはもったいない?

基本的に、紙の本を持っていても電子版が割引になる仕組みは一般的ではないため、電子でも読みたい場合は改めて購入することになります。ですので、手持ちの本を全部電子で買い直すのは現実的ではありません。

私は「持ち歩いて何度も読み返したい本」だけ、クーポンが使えるタイミングで電子版を追加しています。数冊程度に絞れば負担はそれほど大きくありませんし、紙のほうは本棚に置いて眺める楽しみとして残せます。

子どもの本は紙と電子どちらがいいですか?

わが家では、絵本や図鑑は紙、子どもが自分で読み進める長編マンガは一部電子、という分け方をしています。小さい子どもにとっては、ページをめくる動作そのものや、絵を指さしながら親と話す時間も読書の一部だと感じるからです。

電子書籍のストアがなくなったら、買った本はどうなりますか?

電子書籍は「本そのもの」ではなく「読む権利」を買っている形に近いため、ストアがサービスを終了すると読めなくなる可能性があります。過去には、サービス終了時にポイント還元や他ストアへの引き継ぎといった対応が取られた例もありますが、必ず同じ対応があるとは限りません。

そのため、私は「一生手元に置いておきたい本」は紙で持つようにしています。これも使い分けの判断基準のひとつとして、頭の片隅に置いておくと安心です。

まとめ

紙から電子へ切り替えてみて分かったのは、どちらかが一方的に優れているわけではなく、本の使い方によって向き不向きがはっきり分かれるということでした。

  • 長編マンガ・雑誌・小説・一度読めば十分な本は電子が快適
  • 料理本・図鑑・写真集・書き込む参考書・家族で共有する本は紙が使いやすい
  • 迷ったら「作業中に見る?」「大きく見たい?」「書き込む?」「共有する?」「手放す?」の5つで判断する
  • 切り替えるなら、手持ちの本は処分せず「これから買う本」から電子にする

「全部電子」にこだわらず、紙と電子のいいところを組み合わせると、読書はもっと気楽で楽しいものになります。この記事が、あなたなりの使い分けを見つけるきっかけになればうれしいです。