「電子書籍はスマホやタブレットで読むものだから、子どもにはまだ早い」と考えている保護者の方は少なくありません。一方で、「マンガが読みたい」「学校の友達が読んでいる作品を読みたい」と子どもにせがまれて、親の端末で読ませているご家庭も多いのではないでしょうか。
実は、子どもと電子書籍の付き合い方で注意すべきなのは、「電子書籍そのもの」よりも「端末とアカウントの設定」です。電子書籍は、場所を取らず、文字の大きさを変えられ、図書館の電子貸出も利用できるなど、子どもの読書にとって便利な面がたくさんあります。ただし、何も設定しないまま親の端末を渡してしまうと、意図しない課金や、年齢に合わない作品が目に入るといったトラブルにつながりかねません。
この記事では、子どもに電子書籍を読ませる前に知っておきたいリスクと、そのリスクを減らすための具体的な設定・家庭ルールを、年齢別の付き合い方もあわせて解説します。
子どもと電子書籍、まず知っておきたい3つのリスク
リスク1:意図しない課金
電子書籍ストアの多くは、クレジットカードやキャリア決済、ストアのポイントなどを登録しておくと、ボタンを数回タップするだけで作品を購入できます。大人にとっては便利な仕組みですが、子どもにとっては「お金を払っている」という実感を持ちにくい仕組みでもあります。
特にマンガは、1巻が無料や試し読みで読めて、「続きを読む」ボタンから2巻以降の購入画面に進む導線になっていることがよくあります。子どもが「続きが読みたい」と思ってボタンを押し続けた結果、数十巻分を購入してしまった、というのは決して珍しい話ではありません。
リスク2:年齢に合わない作品が目に入る
電子書籍ストアでは、少年マンガや児童書と同じストアの中で、大人向けの作品も販売されています。ストアのトップページやおすすめ欄、ランキングには、利用者の閲覧履歴に応じてさまざまな作品が表示されます。
親のアカウントをそのまま子どもに使わせると、親が過去に読んだ作品の傾向に合わせたおすすめが表示されたり、親の本棚にある作品が子どもの目に入ったりすることがあります。「子どもが検索したわけではないのに、表紙が目に入ってしまった」というケースも起こりえます。
リスク3:使いすぎ・生活リズムの乱れ
電子書籍は、紙の本と違って「読み終わったら本棚に戻す」という区切りがありません。シリーズものなら、1冊読み終わったらすぐに次の巻を開けてしまいます。さらにスマホやタブレットには、電子書籍以外にも動画やゲームなど子どもの興味を引くアプリが入っていることが多く、「本を読むつもりが、気づけば別のアプリを開いていた」ということもあります。
これらのリスクは、どれも事前の設定とルールづくりでかなり減らせるものです。以下で順番に対策を見ていきましょう。
意図しない課金を防ぐための設定
基本は「子どもが使うアカウントに支払い方法を登録しない」
もっともシンプルで確実なのは、子どもが使うアカウントや端末に、クレジットカードなどの支払い方法を登録しないことです。支払い方法が登録されていなければ、購入ボタンを押しても決済まで進むことはありません。
子どもに読ませたい作品は、親が自分の端末で購入してから読ませる、または必要な分だけプリペイドカードでポイントをチャージする、といった方法にすると、使える金額の上限が自然と決まります。「今月はこのカード1枚分まで」と決めておけば、子ども自身がお金の感覚を身につける練習にもなります。
iPhone・iPadの場合
Apple製品には「スクリーンタイム」という機能があり、その中の「コンテンツとプライバシーの制限」から、App内課金を許可しない設定にすることができます。また、「ファミリー共有」を使って子ども用のApple Accountを作成すると、子どもが購入しようとしたときに保護者の端末に通知が届き、保護者が承認しないと購入できない「承認と購入のリクエスト」という仕組みを利用できます。
ただし、電子書籍ストアの中には、アプリ内ではなくブラウザ上で購入する方式のものもあります。この場合、App内課金の制限だけでは防げないことがあるため、ブラウザからストアにログインしたままにしない、ストアのアカウントに支払い方法を登録しない、といった対策もあわせて行うのが安心です。
Androidの場合
Androidでは、Google Playの設定で「購入時には認証を必要とする」を有効にすると、アプリ内での購入のたびにパスワードや生体認証が求められるようになります。また、「Googleファミリーリンク」を使って子ども用のアカウントを管理すると、アプリのインストールや購入に保護者の承認を必須にしたり、利用時間を制限したりできます。
設定の名称や場所は、OSのバージョンや端末によって異なる場合があります。最新の手順は、AppleやGoogleの公式ヘルプで確認してください。
ストア側の設定も確認する
電子書籍ストアによっては、購入時にパスワードの再入力を求める設定や、1回あたりの購入金額に上限を設ける設定、購入確認画面を必ず表示する設定などが用意されている場合があります。利用しているストアのアカウント設定画面やヘルプページを一度見ておくとよいでしょう。
なお、親がふだん使っているアカウントで「ワンタップ購入」のような設定をオンにしている場合は、子どもに端末を渡す前に必ずオフにしておくことをおすすめします。
年齢に合わない作品を見せないための工夫
できれば端末またはアカウントを分ける
いちばん効果的なのは、子ども専用の端末かアカウントを用意することです。親と同じアカウントを使うと、本棚もおすすめ欄も共有されてしまうため、どれだけ気をつけていても親の作品が目に入る可能性が残ります。
端末を分けるのが難しい場合でも、タブレットに子ども用のユーザーを作る、子ども用のアカウントで電子書籍アプリにログインする、といった方法で、本棚とおすすめ欄を分けることができます。家庭内でタブレットを1台共有している場合は、特に検討する価値があります。
本棚の非表示・フォルダ分けを活用する
ストアやアプリによっては、購入した作品を本棚で非表示にしたり、フォルダに分けて整理したりする機能があります。どうしても親のアカウントを子どもと共有する場合は、大人向けの作品を非表示にしておくなど、本棚の見え方を整えておくとトラブルを減らせます。
ただし、非表示はあくまで「見えにくくする」機能で、設定画面から元に戻せる場合がほとんどです。完全な対策にはならないことを理解したうえで、補助的に使うようにしましょう。
OSのコンテンツ制限もあわせて使う
先ほど紹介したスクリーンタイムやファミリーリンクには、年齢に応じてアプリやWebサイトを制限する機能もあります。電子書籍アプリそのものの利用を制限したり、ブラウザで閲覧できるサイトを絞ったりすることで、ストアの中で偶然大人向けの作品に行き着いてしまう可能性を下げられます。
読む時間・読み方のルールづくり
設定だけでは防げないのが、使いすぎの問題です。こちらは家庭ごとのルールで対応するのが現実的です。ルールを決めるときは、親が一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に話し合って決めると守られやすくなります。
- 読む場所を決める:「電子書籍はリビングで読む」と決めておくと、親の目が届きやすく、寝室に端末を持ち込んで夜更かしすることも防げます
- 読む時間帯を決める:「宿題が終わってから」「夕食前まで」など、生活の流れの中で区切りを作ります
- 1日に読む冊数や時間の目安を決める:シリーズものは止めどきが難しいので、「今日は2冊まで」のように具体的に決めておくと守りやすくなります
- 寝る前は控える:画面の明るさで寝つきにくくなることもあるため、寝る直前の読書は紙の本にするなど、使い分けを考えるのもひとつの方法です
- 目を休める:画面との距離を適度に保ち、ときどき遠くを見て目を休めるよう声をかけましょう。目の疲れや見え方で気になることがあれば、眼科に相談してください
ルールは一度決めたら終わりではなく、子どもの成長に合わせて見直していくものです。たとえば、学年が上がったら読める時間を少し延ばす、ルールを守れていたら自分で本を選べる範囲を広げる、といった形で、段階的に任せていくとよいでしょう。
年齢別・電子書籍との付き合い方
未就学児:親と一緒に読むのが基本
この年齢では、子どもが一人で端末を操作して電子書籍を読むというより、親がタブレットで絵本を開いて一緒に読む、という形が中心になります。絵本は紙のほうが、ページをめくる楽しさや、手で触れる感覚も含めて体験しやすいため、電子はあくまで「外出先や移動中の補助」くらいに考えるとよいでしょう。
小学校低学年:親の管理のもとで少しずつ
自分で文字を読めるようになり、学習マンガや児童書を読み始める時期です。端末の操作もすぐに覚えますが、課金や作品の選び方はまだ親の管理が必要です。親が選んだ作品を、親の目の届くところで読む、というスタイルが安心です。
小学校高学年:ルールを決めて自分で選ぶ練習
読みたい作品がはっきりしてきて、友達の間で話題の作品を読みたがることも増えてきます。この時期は、「月にこの金額まで」「この範囲の作品から選ぶ」といったルールの中で、自分で本を選ぶ経験をさせてあげるのもよいでしょう。プリペイドカードでのチャージは、お金の管理を学ぶきっかけにもなります。
中学生以上:自己管理を任せつつ見守る
自分のスマホを持つことが多くなり、親が細かく管理するのは難しくなってきます。この時期は、なぜ課金や年齢制限に気をつける必要があるのかを話し合い、本人に理解してもらうことが大切です。そのうえで、支払い方法やアカウントの管理については、定期的に一緒に確認するといった形で見守っていきましょう。
子どもにとっての電子書籍のメリット
ここまで注意点を中心にお伝えしてきましたが、電子書籍には子どもの読書を後押しするメリットもたくさんあります。
- 文字の大きさを変えられる:文字が小さくて読むのに疲れてしまう子どもでも、読みやすいサイズに調整できます
- 辞書機能がある:作品やアプリによっては、分からない言葉をその場で調べられるものもあり、語彙を増やすきっかけになります
- 置き場所を取らない:子どもが繰り返し読みたがるシリーズものでも、本棚があふれる心配がありません
- 外出先でも読める:旅行や通院の待ち時間など、荷物を増やさずに何冊も持ち歩けます
- 電子図書館を利用できる:自治体によっては電子書籍を無料で借りられる「電子図書館」を用意しているところもあります。お住まいの地域の図書館のホームページを確認してみてください
紙の本と電子書籍は、どちらか一方を選ぶものではありません。絵本や図鑑は紙で、長いシリーズものや外出先での読書は電子で、というように組み合わせることで、子どもの読書の幅を広げることができます。
もし高額な課金が起きてしまったら
どれだけ気をつけていても、思わぬ課金が起きてしまうことはあります。その場合は、慌てずに次の順番で対応しましょう。
- 購入履歴を確認する:ストアのアカウントや、クレジットカード・キャリア決済の利用明細から、いつ・何を・いくらで購入したのかを確認します
- これ以上の購入を止める:支払い方法の登録を外す、パスワードを変更するなど、追加の課金が起きないようにします
- ストアに問い合わせる:子どもが保護者の同意なく購入したことを伝え、対応を相談します。購入日時や作品名などを整理しておくと、やりとりがスムーズです
- 消費生活センターに相談する:ストアとの話し合いがうまくいかない場合は、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターなどの相談窓口につないでもらえます
民法では、未成年者が保護者の同意を得ずに行った契約は、原則として取り消すことができるとされています。ただし、子どもが年齢を偽った場合や、保護者から自由に使ってよいと許されていたお金の範囲内での購入だった場合などは、取り消しが認められないこともあります。個別の事情によって判断が変わるため、自己判断せずに専門の窓口に相談するのが確実です。
よくある質問
子どもに親のスマホで電子書籍を読ませても大丈夫ですか?
短時間、親がそばで見ている状況であれば大きな問題はありませんが、支払い方法が登録されたままのアカウントで一人で読ませるのは避けたほうが安心です。ワンタップ購入の設定をオフにする、App内課金を制限するなど、この記事で紹介した設定を最低限行ってから渡すようにしましょう。
何歳から自分で電子書籍を買わせてもいいですか?
明確な基準はありませんが、お金の感覚がある程度身についてくる小学校高学年ごろから、金額の上限を決めたうえで少しずつ任せていくご家庭が多いようです。いきなり自由に買わせるのではなく、プリペイドカードでチャージした範囲内で選ばせるなど、段階を踏むのがおすすめです。
電子書籍の読み放題サービスは子どもに向いていますか?
月額料金が決まっているので、追加の課金を心配しなくてよい点はメリットです。一方で、読み放題の対象作品には大人向けのものも含まれている場合があるため、子どもが自由に作品を選べる状態にする場合は、年齢に合った作品が中心のサービスかどうかを事前に確認しましょう。
紙の本と電子書籍、子どもの読書にはどちらがいいですか?
どちらにも良さがあるので、一方に決める必要はありません。紙の本は手で触れる感覚やページをめくる体験を、電子書籍は文字サイズの調整や持ち運びやすさを、それぞれ活かすことができます。子どもの年齢や読む本のジャンル、読む場面に合わせて使い分けるのがよいでしょう。
まとめ
子どもと電子書籍の付き合い方で大切なのは、電子書籍を遠ざけることではなく、安心して使える環境を先に整えておくことです。
- 子どもが使うアカウント・端末には支払い方法を登録しないのが基本
- iPhoneはスクリーンタイム・ファミリー共有、Androidは購入時の認証・ファミリーリンクで課金を制限できる
- 年齢に合わない作品を避けるには、端末やアカウントを分けるのがもっとも効果的
- 読む場所・時間・冊数のルールは、子どもと一緒に決めて成長に合わせて見直す
- 万が一高額な課金が起きたら、ストアへの問い合わせと消費者ホットライン188への相談を
設定とルールさえ整えておけば、電子書籍は子どもの「読みたい」気持ちを応援してくれる心強い道具になります。
